未来健康通信2024年4月号
【今月の特集】
◆根面う蝕とは?
加齢や歯周病により歯茎が下がると、いままで歯茎でカバーされていた歯の根本が露出します。この部分を「根面」とよびます。そして、この根面の虫歯のことを「根面う蝕」といいます。
根面はとても虫歯になりやすい部分です。これまで虫歯になったことがないという方にも要注意の虫歯です。では、根面はなぜ虫歯になりやすいのでしょうか?それは、根面の構造と組成に関係があります。
◆根面がむし歯になりやすい理由
①根面の象牙質を覆うセメント質が薄いため
物を噛む部分である歯冠部は、とても硬いエナメル質が象牙質を覆っていますが、根面はエナメル質がありません。ごく薄いセメント質がコーティングしているだけです。細菌の出す酸に溶かされやすく、すぐに内部の象牙質が露出します。
②象牙質はエナメル質よりも酸に弱いため
口腔内は飲食の度に、PHが下がります。通常、お口の中のPHは6.8~7.0の中性ですが、飲食をすることで食物飲料の酸や口腔内細菌が出す酸により、酸性に傾きます。PHが5.5を下回ると脱灰(歯の表面のエナメル質が溶け出すこと)が起こり始めますが、エナメル質よりも象牙質の方が脱灰しやすい性質があります。
そのため、歯冠部は虫歯がないのに気が付かないうちに根面が虫歯になっているということがあります。
◆予防は歯磨き!
歯肉を下げないこと、そのために
○歯周病を予防する
根面の虫歯の大元の原因は歯肉が下がることです。歯肉が下がる主な原因は歯周病です。痛みや歯のぐらつきを感じる前から定期的にメインテナンスに通って、検査、クリーニングを受けましょう。
○磨きかたにもご注意
歯ブラシを歯肉に押し付けたり、歯ブラシを動かす力が強いと歯肉を痛めて歯茎が下がる原因となります。適切な力、動かし方を歯科衛生士に確認しましょう。
○フロスや歯間ブラシを使う
根面う蝕は歯と歯の間の根元の周りから生じることが多いため、歯間もしっかり磨きましょう。歯と歯の間は汚れが溜まりやすいため、歯ブラシだけではきれいにできません。フロスや歯間ブラシも使い歯と歯の間もしっかり磨くようにしましょう。
毎日のセルフケアと歯科での定期的なクリーニングを行って、むし歯と歯周病を予防しお口の健康を守っていきましょう!
【Drブログ】
Dr 岩波 洋一
「講演会を通じて」
先日、秋田市歯科医師会主催で岩手医科大学の先生をお招きした講演会が開催されました。内容は、摂食嚥下・口腔リハビリテーションについてで、後期高齢化率の増加が取り上げられる秋田において身近な話題でした。健康寿命を延ばす、そのためにフレイル(健康な状態と要介護状態の中間に位置する心身状態のこと)などの疾病になる前段階で、リハビリつまりは筋トレのようにご自身で口腔内外の筋肉を鍛えて、予防もしくは進行を遅らせることが重要です。これは「病気にならない身体を創るための医療」と言えます。その医療発展のためには我々歯科医師が患者の食事摂取や歩行など、運動機能や認知機能などを検査で数値化し、本人に気づいてもらう。そして必要であれば、多職種連携で訓練やアドバイスをしながら患者の機能を改善させることが目標です。人間の身体は使わないとどんどん機能が低下します。我々歯科医師も歯の見た目、形だけでなく、おいしくしっかり食事を噛めて、飲み込めているか、機能面に一歩踏み込む必要があります。歯科医療だからできる患者アプローチの可能性を学ぶことができました。
【そこが聞きたい!Q&A】
今月の担当
Dr. ふじた ひびく
Q. 親知らずは抜いたほうがいいの?
A. 親知らずは、真ん中の歯から数えて8番目に位置する歯です。通常、20歳前後で生えてきますが、きちんとした向きに生えてこない場合も多いです。そういった場合は、清掃することが難しいため、周囲の歯茎に炎症を引き起こしてしまうことがあります。
親知らずがまっすぐ生えており、上下でしっかりと嚙み合っている場合であれば、特に抜く必要はありません。また、完全に骨の中に埋まっている場合も、悪い影響を及ぼすことは少ないのでそのままにしておくことが多いです。しかし、歯茎が腫れを繰り返したり、親知らずの手前の歯が虫歯になったりするようであれば、抜くことを考えて良いでしょう。
親知らずの位置や根の形、顎にある神経との近さなどによって抜歯の難易度は変わります。事前に3次元的なレントゲン写真を撮り、神経を損傷せず安全に抜歯できるかどうかを評価します。歯を抜くことのメリットとデメリットを比較して、メリットのほうが大きいと判断した場合に抜歯の適応となります。