未来健康通信2023年9月号
【今月の特集】
「ニコチンがもたらすお口への影響」
ここ数年で、臭いや健康への配慮から、急速に普及している「加熱式タバコ」。従来の「紙巻タバコ」がお口に悪影響を与える事は知られていますが、「加熱式タバコ」はどうなのでしょうか。
「加熱式タバコ」は、タバコ葉を燃焼させるのではなく加熱します。そのため、燃える時に発生する一酸化炭素などの有害物質が減り、「紙巻タバコ」より「健康への害が少ない」とされています。しかし、どちらにも共通するタバコの依存性の要となる物質『ニコチン』は「紙巻タバコ」と比べてもさほど減っていません。『ニコチン』はお口の細胞や細菌に様々な悪影響を与えることが分かっています。
○歯茎や骨へ与える影響
『ニコチン』は「身体に吸収されやすい」という特徴があります。肺に入る前には当然お口にも触れており、口の中の粘膜からも吸収されます。歯茎への影響としては、歯周病菌と免疫細胞が戦う際に細胞から生み出される炎症物質が、歯茎の細胞や顎の骨の破壊を起こしやすくします。また、元々はみずみずしい歯茎の弾力が失われ、血流が悪くなり、栄養の供給や老廃物の除去機能が低下します。さらには、顎の骨(歯槽骨)への影響も考えられます。人の骨は一度できた骨がそのまま存在するわけではなく、古い骨が壊される「骨吸収」と、新しい骨がつくられる「骨形成」がバランス良く行われる事で生まれ替わり、健康な骨が維持されています。『ニコチン』はこの破壊と再生のバランスを、破壊の方に傾けてしまうため治癒が遅くなります。歯周病の治療やインプラント手術、抜歯の際に歯科で『禁煙』をオススメするのにはこうした理由があります。
○タバコと虫歯
『ニコチン』は、お口の細胞だけではなく細菌にも作用します。意外に思えるかもしれませんが、虫歯菌にも影響します。ニコチンの作用で血管が収縮するため唾液の分泌が悪くなり、お口の自浄作用が弱まることで虫歯菌が活発になります。虫歯菌には、「糖から酸をつくる力」と「糖からネバネバした粘着性物質をつくって歯にくっつく力」があります。粘着性物質は、細菌がバイオフィルム(プラーク)を形成する助けとなります。粘着性の強いバイオフィルムは、外敵から虫歯菌を守るバリアになるのに加え、つくられた酸をその内部に溜めることで快適な(増えやすい)環境をつくります。虫歯菌はより多くの酸を生み出せるようになり、より強固に歯に付着するようになります。つまり、歯の表面に多くの酸が長く触れることになるため、それだけで虫歯のリスクが上がるのです。
○タバコがお口に与えるその他の影響
骨や歯茎への影響、虫歯のリスクが上がるなどの他にも、タバコがお口に与える影響があります。
・ニコチンの作用で血管が収縮し歯周病に気付きにくく重症化しやすくなる
・喫煙者特有の口臭がするようになる
・タバコに含まれるニコチンやタールの影響で血行が悪くなり歯茎が黒くなる
・お口の中のガンの原因になる
・吸っている本人だけでなく、周りの人へ受動喫煙による被害が出る
「紙巻タバコ」の害が認識され、十分とは言えないまでも規制されるまでに何十年もかかりました。一方、「加熱式タバコ」は普及してからたった数年です。数十年後に思わぬ害が明らかになり、後悔する人が増えないことを願うばかりです。ご自分と家族の健康のため、この機会にタバコの害や禁煙について考えてみみませんか?
【Drブログ】 Dr 藤田 響
「テレビを買い換えました。」
毎日とても暑いです。暑い日の休日は、家にこもってエアコンの下で涼むのが至福の過ごし方ですが、電気代も気になるので、冷房の節約の為に外出して、お店で涼むのがいいかなとも思うわけです。でも、外出すると余計な買い物をしてしまって、結局、高くついた休日だった、なんてことはしょっちゅうです。そういうわけで、無駄な出費を防ぐ為にも、エアコンの下でテレビが見られるように部屋の模様替えをして過ごしやすい環境にしました。
大学生の頃から使っている、一人暮らし用の小さいテレビでこれまで過ごしていましたが、新しい家具の配置だと、どうもテレビの字幕や番組表の文字が小さくて見づらく、このままだとさらに目が悪くなりそうだったので、模様替えを機に、思い切って新しくテレビを買い換えました。
しかしここで残念な事態が。使っていた録画機を新しいテレビに繋ぎなおしてみたところ、相性が悪いのか、録画ができないことが判明しました。録画機の分まで出費がかさんでしまったのが残念ですが、おかげで今は快適なテレビ生活を満喫しています。
テレビは目でしっかり見なければなりませんが、散財には目を瞑りたいと思います。
【そこが聞きたい!Q&A】
今月の担当
Dr. やまだ まい
Q. 歯周病を薬で治すことはできないの?
A. 歯周病を治療するのに、炎症を抑える薬(消炎鎮痛剤)や、原因になる細菌を減らす抗生物質(抗菌薬)を投与することがあります。これには、飲み薬として処方する場合と、歯周ポケットに薬を直接注入する方法があります。薬を使用すると一時的に細菌の活動を抑えることはできますが、歯周病を完全に治せるわけではありません。あくまでも薬は補助的なもので、歯ブラシや補助用具でのお手入れを行い、歯科医院で歯垢(プラーク)や歯石を機械的に取らないことには、細菌を撃退することはできません。ちなみに洗口剤の中にも殺菌効果のあるものが市販されていますが、プラークはそれだけでは除去できません。洗口剤は、歯みがきのサポート役と考えてください。