未来健康通信2023年6月号
【今月の特集】
「むし歯の予防処置:シーラント」
●「シーラント」って何?
皆さんは『シーラント』が何かご存知ですか?seal(封鎖)‐ant(するもの)というのが名前の由来で正式には『フィッシャー(fissure)シーラント』と言います。fissureは亀裂や溝を意味しており、言葉通り奥歯にある深い溝を合成樹脂で物理的に封鎖する予防処置のことを指します。
奥歯の溝は複雑な形をしていて食べかすやプラークがたまりやすい場所です。人によっては溝がとても深く、歯ブラシではどうしても届かない!ということもあります。入り込んだ食べかすやプラークはそのままだとむし歯菌の温床になってしまいます。特に子供の場合、生え始めたばかりの歯は歯の質が弱いため、むし歯菌の出す酸にとても溶けやすく、むし歯になるリスクが非常に高いです。そこで歯ブラシの届かないような深い溝にそもそも食べかすや細菌を入り込ませないように埋めてしまおう、というのがシーラントです。歯を削らずにできる予防効果の高い処置と言えるでしょう。
●本当に必要?
むし歯予防に有効とはいえ、むやみやたらにシーラントを入れたほうがいい、というわけではありません。奥歯の溝の形状は人それぞれで深い人もいれば浅い人もいます。溝が浅く、シーラントが必要ない子供の場合、詰めたシーラントは外れやすかったり、一部がはがれて段差になることで、そこにプラークがたまり、かえってむし歯になりやすい状況になることも…。歯科医師は溝の深さだけでなく歯みがきがきちんとできているか、食生活はどうかなど、子供のむし歯のなりやすさを総合的に考えて判断をします。下記の例を参考に歯科医院に相談してみてください。
〈シーラントが必要なお子さんの例〉
・奥歯の溝が深く、プラークがたまっている(=歯ブラシが届いていない)
・奥歯の溝が初期むし歯になりかけている、またはなる可能性が高い
・あごが小さく歯ブラシが奥歯に届きづらい
・ほかの歯がむし歯になっている
・むし歯になりやすい食生活をしている
・フッ素入りの歯みがき剤を使っていない
〈シーラントが必要でないお子さんの例〉
・奥歯の溝が浅く、プラークがたまっていない(=歯ブラシが届いている)
・ほかの歯にむし歯がない
・むし歯になりにくい食生活をしている
・フッ素入りの歯みがき剤を使っている
ちなみに成人の場合は噛んでいるうちに奥歯の溝がすり減って浅くなりますし、噛む力によって外れてしまう可能性が高いです。歯の質も強くなっていますのでシーラントを入れる必要はありません。
●シーラントと賢くつきあう
シーラントは入れて終わりではありません。歯の詰め物を入れたときと同じようにその後の経過を診てもらう必要があります。先ほども言いましたがシーラントは噛んでいるうちに一部がはがれ落ちてしまうことがあります。歯の表面との境目にごく微細でも段差ができるとそこにはプラークがたまりやすく、そこからむし歯になることも。せっかくの有効な予防をリスクに変えないためにも定期的に歯科医院に行き、チェックを受けるようにしましょう。
【Drブログ】
Dr 藤田 響
「マリオの映画を観に行きました」
世界中で話題になっているマリオの映画を、私も気になって観てきました。映画は、ゲームの世界を忠実に再現しており、可愛いキャラクターたちが冒険をしている様子に最初からずっと目が釘付けでした。また、劇中に流れる曲は、懐かしのゲーム音楽を壮大にアレンジしたものが使われており、まるで自分がゲームの世界に入り込んだ気分になれる素晴らしいものでした。さらに、作中にはゲームファンなら気付くことができる隠れたネタがふんだんに紛れており、小ネタを見つけるたびに思わずニヤリとしてしまいました。まだの方はぜひ観てください。おすすめです。
さて、GWには東京への旅行も計画しました。目的地の一つに、一度は行ってみたかったNintendo Tokyoがありました。マリオをはじめとする任天堂のゲームキャラクターのグッズが一面中ずらりと並んでいるとても魅力的なお店です。ゲーム好きな私にとって夢のような場所です。タオルやキーホルダーなど、ついついたくさんのグッズを購入してしまいました。
映画やNintendo Tokyoの観光を終えて、子供のころのように夢中でゲームをしたくなった今日この頃でした。
【そこが聞きたい!Q&A】
今月の担当
Dr. やまだ まい
Q.子どもの歯ぎしりはどうしたらいいですか?
A.子どもの歯ぎしりは成長に伴う噛み合わせのずれを、脳が修正しようとして起こる生理的なものなのであまり心配することはありません。大人はストレスやかみ合わせの悪さが原因で歯ぎしりが起こりやすいとされていますが、子どもの場合それは少ないです。
歯ぎしりが目立つ時期としては、前歯が生え始める生後6〜8カ月、奥歯が生えてくる1歳半〜2歳半くらいが多いようです。これは「歯がため」の時期で、噛み合わせの変化に順応するために、「ここで歯をかむのだな」「ここがちょうどよいかみ合わせの位置だな」という学習を無意識のうちにやっているのです。こうしたプロセスによってあごの筋肉も鍛えられます。上下の歯のかみ合わせが整うにつれて自然におさまっていきますので、成長過程として見守っていきましょう。