2009年思い出のひとこまから
今年の秋のこと。久々に紅葉真っ盛りの軽井沢に行くことができました。色鮮やかな真っ赤な紅葉と黄葉と常緑林のコントラストは、秋田のそれとは、明らかに異なる色彩を醸し出していました。軽井沢は、恩師の古稀のお祝いをした思い出の地。そして、今話題の現代の日本人のための進化した湯治場、星野温泉リゾートもあります。今回は、友人の結婚式のお祝いに駆けつけたのです。ショー記念礼拝堂で厳粛に式が執り行われ、その後、老舗の万平ホテルで心のこもった温かい祝賀会でした。軽井沢は、鳩山首相の広大な別荘もあり、由緒ある名家と歴史を感じる佇まいの建物ばかりでした。
私の最大のお目当ては、なんと言っても、「石の教会」。軽井沢に行くのなら、私にとってここは外せないスポットです。その教会は、北海道大学の大先輩である二期生の内村鑑三先生の思想を受け継いで建てられています。ここは師が遺したMemento!(記念物)、信仰をもっていなくても(私はキリスト教ではないのですが)、心のどこかに祈りたいという思いを秘めている人にも、門戸は開かれているのです。
そして、併設された内村鑑三記念堂の中に、師の直筆の書がいくつも展示されています。「Dentistry is a Work of Love」日本語に訳すと、「歯科医療は愛の仕事なり!」ということになります。この書を前にたたずむと、心が凛とした気持ちになります。師が後世の私たち歯科医療人に遺してくれた優しく美しい言葉に感激し、同時に、励まされる思いがします。
私の手元には、師の著書であり、1894年夏期学校での講演をまとめた愛読書があります。「後世への最大遺物」というタイトルの本です。普通の人間にとって実践可能な生き方とは何か。我々は後世に何を遺していけるのか?何をこの世に遺して逝こうか?金か、事業か、思想か?その何物でもなく、その生の時を無為に過ごすことなく、ひたすら一生懸命に生きること、それが高尚なる生涯であり、後世への最大で最良の贈り物なのだと説かれています。
勇ましい高尚なる生涯、それが、どんな物なのかは、私にもよくわかりません。でも、そんな風に生きてみたいという願いを持っています。そんな人たちにとっても、師が思いを伝えるために創った場所、それが「石の教会」なのでした。
2009年も、今月で終了。来年こそはと、心に思いを固くしております。