口の中からいのちを診る
北海道大学は、札幌駅のすぐ北西部に広大なキャンパスを有する旧帝国大学(日本に七つある)の一つです。クラーク博士像やポプラ並木が観光名所となっていますが、秋紅葉のシーズンは、歯学部沿いの北13条通りの銀杏(いちょう)並木が、とても美しく青空に映えるのです。人知れぬ穴場的な観光スポットと言えるかも知れません。
先日、その母校で口腔解剖学講座の教授に就任した友人の祝賀会と同期会が開催されました。彼とは、大学入学と共に仲良くなり、時間に余裕のあった(ヒマ?)教養学履修の2年間は、しょっちゅうゲーセンに行ったり、飲んだりした仲でした。成績は、私と比較にならないほど抜群に優秀で、卒後、大学院へ進学し、私は、将来きっと彼は教授になるだろうと信じていました。しかし、そんな彼も、実のところ、諸情勢から教授になるのは、半ば諦めていたとのこと。人生の大きなうねりの中で耐えしのぐ時が過ぎ、「運」がめぐって来たのでしょう。「人生どこでどうなるか分からないものだぞ!」としみじみと言う彼の言葉には、ずっしりとした重みを感じ、勇気づけられました。
また、現在、北大は「口の中からいのちを診る」というテーマで教育と研究を行っています。生きている証として、息をする、話す、食べることがあげられます。それらが、すべて口の中から始まるのです。そして、口の中を診ることで、全身を診ることにつながっていくのです。この発想は、当クリニックで行っている「良い歯のセミナー」へと通ずることなので、とても嬉しく思います。
最後に、彼の話でおもしろかったのをひとつ。人間の身体を「ちくわ」と考え、その先端を口、反対の端を肛門と考えて、これに頭と体、お尻をつけると、ハイ、人間ができあがり。発生学的に考えると、口と肛門は、まったく同じ組織なので、「ちくわ」のチューブを伸ばし続けて胃腸になったとのことです。口=肛門なのですよ!ビックリしませんか?