デジタルって本当にいいの?
世の中、ハイテク、アイティー(IT)が花盛りのようです。その一つに、デジタル化ということも含まれることでしょう。アナログ・テレビから、デジタル・ハイビジョンテレビへの移行が身近な例と言えます。アナログとは、「連続的に変化する量」であり、それに対して、デジタルとは、「数字列として表現する量」です。昔ながらの白黒やカラーのフィルム写真がアナログであり、最近のデジタルカメラという名のごとく、電子画像で記録するのがデジタルになります。
先日、NHKで「デジタル化と欲望」というテーマの番組がありました。デジタル化が欲望にどのように結びつくのだろうか?と何気なく見ていたのですが、なかなか奥が深い話に、驚きと共感を持ったのです。アナログというのは、割り切れるものではなく、どこか漠然としていて、色あせた写真のような感触とか、曖昧な感覚、何となく○○〜という要素があります。しかし、デジタルは、スパッと数字で表現され、そこには、人の感情の入り込む余地がありません。
たとえば、アメリカの車メーカーのGMが破綻しましたが、GMの主力製品は、ラグジュアリー(絢爛豪華、ぜいたく)な高級車、キャデラックなどです。消費者の数値化できないアナログ感覚には制限があり、ある一定レベルでストップし消費者のラグジュアリーカーに対する欲望が衰退した結果、需要が急激に落ち込んだのでした。それに対して、サブプライムローン問題は、典型的なデジタル化による際限のない欲望の結末のようです。本来、不動産というデジタル化しにくいものを、小口の証券化をし、完全に数値化したため、それを取り扱うビジネスマンたちにより、その数字や額だけが実態を離れて、10万円が100万円、100万円が1,000万円、1,000万円が…と欲望の熱狂に巻き込まれてしまい、大崩壊したのでした。その破綻の規模は、GM1社と比べようもなく巨大であり、世界中を大不況にまでおとしいれたのです。それだけデジタル化によって、人々の欲望が限りなくなっていったことを物語っているのです。
私の頭の中では、日頃、デジタル化ー電子化ーオンライン化ーインターネットー携帯電話とアナログ的に漠然とつながってしまい、現代の世の中の危険性を感じています。それは、デジタル化による果てしない欲望の追求は、子供たちの健全な育成を妨げたり、さまざまな犯罪につながったり、国家権力による統制の強化にもつながることでしょう。つまり、「デジタル化により、何ごともとどまることなくエスカレートする」と思うのです。そして、それは、はるかに人間の能力や叡智までも超えてしまうことになるのでないかと、世界の行く末を危惧しております。
いつでも、アナログ思考でアバウトな人間なのですが、今回見たテレビ番組で、あらためて、アナログもいいものなんだなあ〜と思った次第です。