スキーレーサーたちの春！

　4月の末、桜の花の開花を告げる頃、八幡平スキー場は、未だ2ｍ60cmの残雪をかかえ、絶好のスキー環境であった。しかも、時折、真冬のような吹雪に見舞われる日さえあり、下界とは別世界であった。子供たちは、ここで2週間余りに及ぶアルペン競技スキーのレーシングキャンプに参加した。ゴールデンウイークに入ると、早朝6時からリフトが動き、トレーニングは佳境に達する。全国から、ここで開催されていたいくつかのレーシングキャンプに、たくさんの参加者が集まり、熱きレーシングスピリッツを持つ人々で盛況であった。小学低学年から60歳を超える方まで、皆がレーサーであり、真剣にトレーニングに取り組んでいた
　そして、現在は、5月の末となった。所を変えて、今度は、お隣の山形県月山である。秋田市からは、酒田まで海岸線を走り、そこから高速に入るとおよそ3時間でふもとの駐車場に到着する。これまた、今年の残雪は豊富でメインのゲレンデには、4〜5ｍありそうである。昨年の同じ頃は、二人乗りのリフト乗り場までまったく道中雪がなく、歩いて行くのに一苦労であったが、今は、2ｍはあろうかという残雪の一山にＴバーリフトが稼働しており、楽々そこまで行くことができる。私たちは、まずは、6月中旬まで土日ごとに練習予定であるが、最終的には7月末までスキーができるようである。
　スキーをやっているというと、冬だけの話で、春から秋にかけては、何もやっていないとか、暇をもてあましているのではないかと思われる方もたくさんいるようであるが、それは、はなはだ認識不足である。このように春は絶好のトレーニング期であり、シーズンを終えて、来シーズンへの飛躍の足がかりとして、きわめて重要なのである。チャンスがあれば、夏は氷河や南半球（冬）で、初冬（10月中旬〜）もアルプスの高山でレーシングキャンプをすることだってある。そうすると、年間でまるまるスキーを履かない月は、3ヶ月程度しかないのである。
　また、スキー以外に、体力トレーニングやコンディショニングトレーニングを欠かすことができない。スキー強国・オーストリアでは、さしあたり、基礎体力養成のために、1週あたり600分（10時間）をメドに、全身持久力トレーニングをしている。それから、筋力や筋持久力、コーディネーショントレーニングを積み重ねて、冬のシーズン（10月から）に向かうのである。だから、学校から帰ってから、そうしたトレーニングプログラムをこなすのは、大変なことである。このいわゆるオフの体力トレーニングは、きわめて重要であり、ここで身体をつくっておかないと、とてもとても厳しい冬場のレースを乗り切ることはできないし、良い成績を出すこともできないのである。
　いずれの道も、トップを目指すには、並大抵の努力ではできない。当診療所所属で先の国体で優勝した滝下樹理選手も、我が家のジュニアレーサーも、来シーズンへ向けて本格始動しているのであった。